今月のこの人。荒木みな子さん (魚商店主)

今月のこの人。荒木みな子さん (魚商店主)

おいしいお魚で食育を

荒木みな子さん(あらき みなこ) 「魚商」店主

◆みんなが集まれるようにお店を

「楽しいことしかしませんよ、ははは。死ぬまで笑っていたい。それが私の夢です」と快活に話すのは、島本センターの「魚商」店主の荒木みな子さんである。

 荒木さんは、高校まで兵庫県西宮市で過ごし、卒業後はアパレル会社に就職し、その後独立した。飲み友達の一人に島本町の出身の男性がおり、島本町の川辺で友人らとよく飲んだ。

 「島本町に来たときは、なんていい町なんだと思いましたね。自然いっぱいで、空気もきれい。大阪から遠くもない。ここで子育てしたいなと思いました」。結局、その島本の友人と結婚し、島本町に移り住むことになる。

 結婚後、アパレルの会社でパート勤めをしていたが、子どもを産むのに立ち仕事はきついと感じ、別の会社で事務仕事をするようになる。しかし「やっぱり事務仕事は向いてない。パソコン相手に誰ともしゃべらないのは寂しい」と感じていた。

 子どもができるまでは、ご主人の友達が家に来て、週末は家で飲み会をしていた。「うまいわ、うまいわ」と言って料理を食べてくれるのがうれしかった。料理上手の母の影響で、元々料理は好きだった。しかし、子どもができてからというもの、友人たちは気を使って来なくなったしまった。その時に「お店を始めたらみんなまた集まれるのでは」と思った。

 ただ子どもがまだ小さかったため、夜の営業は落ち着いてからにしようと、最初はランチだけのカフェを考えていた。結婚してからスキューバーダイビングを始めていたのであるが、高知県にあるダイビングサービスのオーナーが漁師も兼ねており漁場も持っていた。行く度においしい魚を食べさせてくれたり、送ってくれたりもした。海の近くの魚のおいしさに改めて気づく。そのオーナーが、「せっかくこんなうまい魚を送ってるのに、魚屋の料理をしたらいい。大阪の人間はうまい魚を知らんじゃろう」と言ってくれた。この言葉が背中を押した。おいしい魚を食べるような飲食店にしようと思った。

◆ランチでお魚やお酒を出す

 そこで高槻の割烹料理屋で修業することになる。高槻ばかりでなく地元でやるなら地元の客層も見ておかなければと、当時島本にあったお店でオープニングスタッフとして働いたこともある。その際、意外に昼から飲む人が多いことに気づいた。「引退後に仕事も時間も金銭的にも余裕のある人って、お昼からランチ食べながらお酒飲むんだな。昼から飲むお店しよう!」。

 「魚料理をメインにした昼飲みもできるお店」という方向性が決まった。次に店名である。「なんとか丸」にすれば、魚料理と分かるだろう。「なんかほっこりして心丸くなって帰れるお店がいいな」と、新鮮なお魚を出すから新鮮の「鮮」と、ちょっと酔っ払えるように「酔」を入れ、「鮮酔丸」とした。こうして平成27年に鮮酔丸はオープンする。

 昼飲みができる魚料理屋は評判が評判を呼び、客足は着実に伸びていった。がここで悲劇に襲われる。そうコロナ禍である。コロナ禍で休業や廃業に追い込まれた店は多い。鮮酔丸も例外ではなかった。「店を畳もう」という考えが、一瞬頭の中をよぎった。しかし「このままだと漁師さんとの関係もなくなってしまう。待っているのではなくて、求められてるところに売りに行こう」と思い直した。弁当も始めキッチンカーも買い、地元のイベントにも積極的に出るようにした。「島本町で一軒も店潰れないようにがんばろう」と、他の飲食店と協力し、役場の前で弁当を販売したりもした。コロナ禍では、昼のお弁当プラス夜のおかずのために魚を買う人が結構多かった。島本には魚屋がなく需要があることに気づいた。

◆お魚好きなお子さんを増やしたい

 やがて子どもも大きくなり、今度は夜に立ち飲みができる店を考えていた矢先、理想通りの空き店舗が見つかった。こうして令和7年4月、鮮酔丸の近く島本センターに「魚商」がオープンした。

 「魚商の『商』はショータイムの『ショー』でもあるんです。なので子どもたちの前で解体ショーをしたいんです。小さいときはお魚が好きでないことが多い。でも新鮮な魚ならおいしいし、健康にもいい。『漁師さんがとってくれて、詰めて市場に行って、市場に私が取りに来て、この店に来て並んで、そしてみんなのお家に行くんだよ』とか、そんな話をして、お魚好きなお子さんを増やしていきたいなと思うんです。食育の意味からも」。

 さらには、自身も犬を飼っていることもあり、犬と一緒に飲めるドッグ居酒屋の構想も練っているという。「楽しいことしかしない」と笑いながら荒木さんと話をしていると、こちらも元気が湧いてくる。お魚を食べると元気になることを身をもって証明している荒木さんに乾杯である。

取材・文・撮影 – SMALL編集部