〜今月のこの人〜
赤羽 遥さん
学生時代から考えていた
「このスコーンは島本特産のタケノコが入っているんです」と、熱心に説明してくれた元気なお姉さんがいた。万博記念公園で開催されていた「ロハスフェスタ」での出来事だ。たまたま友人と訪れ、筆者の地元島本町から出店している店があると知り、そのブースに足を運んだのである。その元気なお姉さんこそ、今回の主人公・赤羽遼さんである。
学生時代からカフェをやりたいと考えていた。なかなか機会がなく、結婚後に子どもを産むことを考えると、しばらく先になるだろうと思っていた。それまで京都の山科で過ごしてきたが、結婚後、自宅購入のタイミングで、ご主人の実家のある島本町へ移り住むことになる。子どもが保育所に中々入れずに待機していたときに、子育てしながらの就職は難しいと考え、デザインの仕事を始めた。
やがてお客さんの要望に合わせたデザインにすることができる「オリジナルネームスタンプ」を、水無瀬商店街で開催されていた「第三土曜市」に出店することとなった。他の商店主との交流が生まれ、「お世話になっているこの商店街でカフェをやりたい」と、かつての思いがふつふつとよみがえってきた。
「第三土曜市」に出店しながら、週末には京都の知り合いのカフェの手伝いを1年ほどしていた。「3人目の子どもが1歳の時に、毎週末に京都まで手伝いに行くのがとても大変でしたね」と言う。
ハルカフェ誕生
その時分に縁あって商店街内の物件を紹介してもらう機会があった。「子どもはまだ小さいけど、ちょっと波に乗ってみよう」と思い切った。こうして平成29年(2017)6月に「Smile village ハルカフェ」が産声を上げた。4人目の子どもの誕生である。
カフェだけでなく、デザインやご主人がされている燻製など、すべてに「Smile village」という名前が冠されている。「Smile village」という一つのビルに、自分が手掛けるグループ店舗がにぎわう、そんなイメージにしたいとの思いからである。
学生のころは、カフェ&ギャラリーのような形にして個展も開催できる場所にしたいと考えていた。しかし、いざ自分自身が子育てに直面してみると、子育てママがゆっくりご飯を食べる場所がないことに気づいた。そこで2階の14畳の広さを利用し、おもちゃや絵本がたくさん置いた。「島本唯一のキッズカフェ!」を売りに、子連れママたちの憩いの場となった。
「来てくれるお客さんの子どもの成長が見られるのがうれしいですね。赤ちゃんだった子が、大きくなって喋り始めたときに、『ハルカフェに行きたい!』と言ってくれたりするんです。カフェを始めてほんとうに良かった」
お店の前が通学路なので、小学校に上がり下校の時に店の扉をガラッと開けて、「こんにちは!」と言って帰る子もいる。なんともほほえましい光景である。
カフェにはいろんな人が来る。さまざまな情報が入ってくるので、不思議と町の動きが分かったりする。そのおかげで人と人をつなげることもしばしばあるという。赤羽さんは「町のキューピット」なのかもしれない。
にぎわいづくりのキーパーソン
赤羽さんの魅力はハルカフェ店主だけにとどまらない。元気なお姉さんもこれまでPTA会長をはじめ、「島本ぐるっとマーケット」「商店街サミット」などの委員として、大車輪の活躍を見せる。遅い時間の会議にもかかわらず、子ども3人を連れて出席する赤羽さんに敬服するのは筆者だけではない。にぎわいづくりにかけては、間違いなく島本町を代表するキーパーソンの一人である。
いろいろな場でその都度、いろいろ発信できましたし、異業種の方ともつながりができました。ギブ&テイクの関係が築けたことがとてもよかったです」
「島本町は何もないところ」と言う人が多い。何もないとはいっても、実は掘り下げてみたら魅力的なところがいっぱいあり、「ポテンシャルを感じる」と、赤羽さんは言う。
おそらく、町民の根本にはそういう想いがあり、だからこそ離れたくない人が多いのも事実だろう。住み続けたい街ランキングで全国1位に輝いたのがその証拠である。
「やはり自然が豊かだし、子育てにはいい場所ですね」
実際に3人の子どもを育てながら、子育て世代にもやさしい場所を提供している赤羽さん。今日も憩いと元気なお姉さんを求めて、「Smile village ハルカフェ」に足を運ぶ人たちがいることだろう。
実際に3人の子どもを育てながら、子育て世代にもやさしい場所を提供している赤羽さん。今日も憩いと元気なお姉さんを求めて、「Smile village ハルカフェ」に足を運ぶ人たちがいることだろう。