島本から世界へ発信するフォトグラファー

島本から世界へ発信するフォトグラファー

〜今月のこの人〜

松尾 圭一郎さん

DSC04217

やりたいと思ったことはやったほうがいい

「自分の人生、一度死んでいるようなものなので、やりたいこと思ったことは、今やっておいたほうがいいなという考えで日々行動しています」

そう語るのは、島本町を拠点に世界で活躍するフォトグラファー松尾圭一郎さん。令和元年、ノルウェーで開催されたWPC(ワールドフォトグラフィーカップ)という世界最大規模のフォトコンテストにおいて、ウェディング部門7位入賞、そして日本最優秀フォトグラファーにも輝いた。令和4年8月のアメリカのコンテストでも入賞。現在、全米写真家協会で日本人として唯一のマスターウェディングフォトグラファーとして活動している。27歳の時、一眼レフを触ったこともない完全な素人としてカメラの世界に足を踏み入れた。その後の努力と経験が、世界的なコンペでの入賞、そして海外でのマスター授位へと導いた。

幼少期の1歳の頃、お正月の餅踏みの最中、突如鼻血が止まらなくなった。すぐに病院へと連れていかれたが、そこで血小板減少性紫斑病という難病の診断を受けることとなった。この病気は、出血が止まらなくなるもので、最悪の場合、命を失うことも。しかし、母親の血を輸血してもらい、奇跡的に回復した。この経験が、冒頭記した彼の人生観を形成するきっかけとなった。

学生時代、「自分が本当にやりたいことはなんだろう」と日々悩んでいた。サークル活動でギターを弾いたり、ビリヤードにのめり込んだりしていたが、ある日、精神的に深く落ち込んでしまい、一度自分を見つめ直すきっかけになればとニュージーランドへの語学留学を決意。留学中、さまざまな国の友だちができ、 多様な文化や価値観があることを知った。広大な大自然の中で独りになった時、「今ここで自分がどうなろうが世界は何も変わらない。だったら自分のやりたいようにやってみよう」と思い至った。帰国後は、過去の自分にとらわれず、都市計画やまちづくりの研究に関わりながら、自分の道を見つける決意を固めていった。

フォトグラファーになる

DSC04225

ある日、家の犬を何気なくコンデジで撮影し、その写真を新聞社のコンペに送ったところ、偶然にも西日本大賞に選ばれる。この経験をきっかけに、「カメラの道も面白いかもしれない」と考え、カメラマンとしての道を選ぶことに。世界で数々の賞を受賞している写真館に入社し、フォトグラファーとしての第一歩を踏み出した。 家族からは心配の声もあったが、学生時代の悩んでいる姿を見ていたからだろう、「何もやらないよりかは好きなことをやってみたら」と背中を押してくれた。

元々理系で人見知りなのに、「ウェディングフォト」という、シチュエーションに合わせてお客様の笑顔、真剣さ、眼差しなどさまざまな表情を引き出さないといけない。はじめは辛いことや落ち込んだこと、失敗したこともたくさんあった。撮影に集中しすぎて、テーブルのグラス倒したり、花嫁さんのベールを踏んづけたり……。ただ、フォトグラファーという仕事は自分でやろうと決めたこと、好きなことだったので乗り越えられた。

その後、京都や神戸で新しい事務所やフォトスタジオの立ち上げを任されることになる。こうした経緯から、歴史的な建造物に興味が湧くきっかけになった。古き良きものを取り入れながらも、そこに新しい文化も取り入れ自分のスタイルを作っていこうとした。

撮影のコンセプトは「Image with Love(愛の宿る本物の一枚)」。結婚式場の撮影はもちろん、夫婦の出会った場所や思い出の地に同行して、ストーリーを作りながら撮影する提案をしている。また、最近では海外での撮影や作品展示、撮影以外にも講師としての活動や海外フォトグラファーとの国際交流など活動の幅を拡げている。

島本から世界へ

IMG_1454

現在、松尾さんは島本町を拠点に活動している。島本町で移り住んで約15年になる。結婚当時、夫の松尾さんが京都、奥さんが大阪での勤務だったため、お互い学生時代に住んでいた徳島に雰囲気が似ていて、ちょうどお互いの勤務地の間に位置していた島本町に移り住んだ。現在は子供が2人できたこと、またコロナ禍で独立し、拠点を島本町に移したこともあり、地域のつながりができてきた。島本町の資源を活かす活動をしたいと思い、美容室とコラボして若山神社でヘアメイク×フォトグラフィーの作品を作り上げた。

 

「『島本から世界へ』というテーマでカメラを用いて島本町を舞台とした物語を残し、それを世界に発信していきたいですね。さらにクリエイティブなことができる仲間を増やしたり、地域の子どもに喜んでもらえるような撮影イベントも開催したい」

そんな松尾さんが撮影した島本町のブックレットが先日完成した。そこには、松尾さんが語る島本町を舞台にした物語がたしかに描かれていた。

DSC04162
IMG_1455

好きな言葉は、ウォルト・ディズニーの「夢見ることができれば、それは実現できる」。ただ、昔の自分のように夢を見つけられない人もたくさんいると思いから「準備ができたらいつでも夢を探す旅に出発できる」と自分の言葉を足し、日々実現に向けて成長と努力をしている。

カメラに対する探究心、世界に飛び立つ行動力と実行力、そしてセンスが重なりあい、フォトグラファー松尾圭一郎の世界観が作られているのかもしれない。

取材・文・撮影 - SMALL編集部