「アイシングクッキー」で夢を叶える

「アイシングクッキー」で夢を叶える

〜今月のこの人〜

豊野喜世さん

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「アイシングクッキー」と出会う

温かい雰囲気の木製ドアが開いた。

「こんにちは〜!」素敵な笑顔で出迎えたのは、アイシングクッキーの製作とオンライン販売を手がける「おかしのこびと」オーナーの豊野喜世さん。

アイシングクッキーの「アイシング」とは、砂糖と卵白を混ぜて作ったクリームのことである。そのクリームにいろんな色をつけたものを使用し、クッキーの上にデコレーションしたものをアイシングクッキーという。

豊野さんがアイシングクッキーに出会ったきっかけは、十数年前に友人の結婚式のプチギフト製作を依頼された時のことであった。何を作ろうかとインターネットで検索したところ、当時珍しかったアイシングクッキーを海外のサイトで見つけ、そのかわいらしさにとても心惹かれた。子どもの頃からお菓子作りや絵本が大好きだった豊野さんは、「こんなにかわいいお菓子、私も作れたらいいな~」と独学でアイシングクッキーを作り始めた。その頃、絵本カフェに勤務していたこともあり、店主に自作のクッキーをお披露目したところ、そのかわいさと出来栄えに驚き、お店で販売することになった。趣味で作ったアイシングクッキーが商品となり店頭に並ぶとすぐに売れたという。

平成28年(2016)に独立。アイシングクッキーを製作し、カフェなどに納品するための製作場所を地元島本町(水無瀬駅前商店街)で開業した。販売店舗ではなく製作作業のみができる小さな場所から始まった。絵本に出てくるような感じにしたいとの思いから「おかしのこびと」という屋号にし、オンラインでも販売開始。そのかわいさと評判は、どんどん拡がっていった。

想いを込めて丁寧に作る

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アイシングクッキーは出来上がるまでに最短で3日はかかる。クッキーは湿度が大敵で乾かすだけでも6時間はかかるという。作成する際に意識していることは、見た目も可愛いのはもちろんだが、やはり食品なので「食べたい」「食べたくなる」ものに仕上げること。奇抜な色にならないように天然色素を使用した色付けにこだわる。

ネット販売のみで店舗にしないのもこだわりの一つである。作品はとても繊細で出来上がるまでに時間がかかるもの。製作以外のことで手を取られたり考えたりに時間を取られることで作品作りに集中できなくなる。店舗で販売すれば売れるかもしれないけれど作ることに専念したい。そうして丁寧に作られるクッキーには、豊野さんの想いが一つ一つ優しく表されている。

作品のアイデアはどこから生まれてくるのだろうか。ふだんの生活の中で見るものや過去に経験したことなどが積み重なり、それをクッキーの形や表現に変えて見てしまうという。「例えば歩きながら見えたもの、窓から見えた景色の中で、「これってクッキーにするとしたらこんな形かな?こうしたらクッキーにできるかな?と、頭の中でクッキーの形にしてしまう。職業病ですね」と笑いながら話す。

「夢は叶っています」

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アイシングクッキーづくりで良かったことは、注文されたお客さまとつながり、その方それぞれの人生のストーリーに寄り添えることだという。例えば、お客さまのご結婚、ご出産、お誕生日、節句や季節ごとのイベントといった大切な節目には、いつもクッキーをご注文してくださることにとても喜びを感じるという。
過去にはもちろん辛かったこともある。何百枚と焼いたクッキーが割れてしまい、納品期日が差し迫っている中、作り直さなければならなくなったこともあった。また、家庭との両立ということもあり、日中は製作し、夕方家族の食事の支度に家に戻り、その後少し仮眠して夜中にまた作業所へ戻る。

 朝、子どもの学校の準備のために帰宅し、また製作所に戻る。そんな目が廻る日を数日間続け作品を完成させることもあった。

「目の前のお客さまが喜んでくださることで辛さを忘れることができる。辛いことも時々はあるけど、本人が一番楽しい!と思っているので作品作りを続けていけるんです」。豊野さんのまっすぐな眼差しと言葉に力強さを感じる。

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現在、作業場所に併設のアトリエでは定期的にプチマルシェを開催。その日は行列ができるほど賑わっている。また地域の手づくり市やイベント、町外近隣のフェスなどにも出店しているので、アイシングクッキーを手に取って買える機会が増えている。SNS販売が中心のアイシングクッキーを選んで買えるのは島本町民の特権といえよう。SNSの一つインスタグラムでは、フォロワーが2万人を超えた。

今後の「夢」を尋ねたところ、「もう、すでに夢は叶っています」と、少し照れくさそうに微笑みながら答えた。なんとも印象的で、この言葉に豊野さんの作品を作り続ける想いがすべて込められている。

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【営業情報】

住所:〒618-0014 大阪府三島郡島本町水無瀬2丁目4−10 MUKビル 2F

取材・文・撮影 - SMALL編集部